登録販売者としてこんな時、どうしたらいい?2

前回の続きとして、新人登録販売者が対応に苦労する代表的なケースと、その対応の仕方について、いくつか紹介します。

マニュアルを確認する登録販売者

💊④「一番効く薬はどれですか?」という質問

慢性的な倦怠感や不眠、のぼせ、冷え、立ちくらみ、手足のしびれ、食欲不振、吐気、めまいなど、いわゆる「不定愁訴」と呼ばれる症状は、新人登録販売者にとって苦手な事例の1つです。

不定愁訴への対応では漢方薬を活用することが多くなりますが、店舗によって取り扱うアイテム数に差がありますし、症状の他に飲む人の「証」を確認するなど独持な見方をするので、非常に奥が深い分野です。まずは店舗にある漢方薬の処方の適応症や、配合されている生薬などについて学習していきましょう。

また、「風邪で熱と咳があって、下痢もしている」というように、複数の症状が出ている場合も、お客様の状況を捉えるポイントがわからず対応に困ることがあるでしょう。症状が多い時は、「最もつらい症状」と「2番目につらい症状」を聴き取って、ある程度範囲を絞ってみるとよいでしょう。

症状の見当がつかないのは、病態の知識不足のせいでもあるので、わからなかったことはその都度調べて記録しておきましょう。

💊⑤商品の「効能・効果」に記載されていない症状

添付文書の効能・効果に記載がない症状に対して、その商品をすすめてもよいかどうか迷った経験のある登録販売者も多いと思います。基本的に、添付文書に記載がない使い方はできません。

例えば、「原因のわからないめまいを抑えるために、トラベルミンをおすすめしてもいいか?」という場合、トラベルミンの効能・効果には「乗り物酔いによるめまい・吐き気・頭痛の予防緩和」と記載されていますので、乗り物酔いが原因でなければおすすめできません。「めまい」「頭痛」といった症状だけでなく、それが何に由来するものなのかもしっかり確認しましょう。

また、サプリメントの効き目をたずねられることがありますが、サプリメントは効能・効果を謳えないものなので、病気の症状に効果があるというような返答や情報提供はできません。

便秘で悩む女性

💊⑥特定の薬を長期連用している人への対応

咳止め薬など、濫用のおそれのある成分を配合する商品については、販売の際の本数に制限が設けられています。依存性のある成分が配合された商品を長期にわたって連用していると、本人の意思だけで使用を止めることが難しくなります。登録販売者が店頭で出来ることは限られると思いますが、濫用が疑われる人にはそのリスクを説明する、毅然とした態度で販売を断るなど、店舗としての対応を決めておくとよいでしょう。1人で判断するのではなく、店舗の従業員で統一した対応をとることがポイントです。

咳止め薬以外にも、便秘薬や睡眠改善薬、鼻炎薬、解熱鎮痛剤、総合感冒薬など、市販薬全般で特定の商品を長期間連用している事例に遭遇することが多々あります。対症療法を目的とする市販薬は、基本的には症状がある時に使用するものです。

しかし、「便秘薬を服用しないと排便できなくなった」「点鼻薬をスプレーしてもすぐに鼻がつまる」「風邪薬を毎朝飲まないと気分がスッキリしない」など、さまざまな理由で市販薬を長期連用している人がいます。

心理的な依存などから使用を止められない状態に陥っている人もおり、繰り返し同じ商品を購入する人に対しては、適切なアドバイスが必要でしょう。

「お薬の効き目で、何か困っていることはありませんか?」といった声かけから始める問良いと思います。こちらのアドバイスに耳を貸してもらえないケースもありますが、消費者が安全に市販薬を使用するのをサポートするのが登録販売者の役割。無関心であってはいけません。

そもそも連用によるリスクを知らない人もいるので、症状の聴き取りを行いながら、丁寧に情報提供しましょう。

登録販売者としてこんな時、どうしたらいい?

新人登録販売者が対応に苦労する代表的なケースと、その対応の仕方について、いくつか紹介します。

錠剤やカプセルのくすり

💊①「一番効く薬はどれですか?」という質問

風邪薬や鎮痛薬など、商品の種類が多い中で「一番効く薬をください」と言われることはよくあります。

市販薬は症状に対して商品を選択するので、まず症状の聴き取りや基礎疾患の有無を確認する必要がありますが、それに答えてもらえないことも多いです。

お客様が急いでいるといった事情もあるでしょうが、「どの薬が効くかは、症状によって異なりますので、どのような症状なのか教えていただけますか?」と聞いてみましょう。

💊②「この薬、強いですか?」という質問

とくに、ステロイド成分配合の商品や鎮痛薬の相談で多い質問です。一般消費者の方は、薬について「強い」「弱い」といった表現を用いることがありますが、新人登録販売者が答えに詰まる質問ではないでしょうか。

解熱剤

というのも「強い」と言いう言葉は、「副作用がある」「効果が現れるのが早い」「効果が長く続く」など、人によって違う解釈をされるからです。

「強い薬は嫌だ」と感じる背景には副作用への心配などがあると思われますが、実際には薬に関する知識が十分でないことによる漠然とした不安や恐怖感によるものです。

薬の正しい使用法や使用上の注意、どんな時に使用を中止すべきなのかなど、きちんと情報提供することで、その不安は取り除けるはずです。薬の作用や副作用について、わかりやすく丁寧に説明するようにしましょう。

💊③「飲んでいる薬が効きません」という相談

市販薬を使用しているが効果がないという問い合わせでは、まずは使っていた商品名と使用期間や症状の経過を確認します。使用していた商品が合っていなかったケースも考えられるので、その場合は症状に合った商品を提案しましょう。

一方、出ている症状が重いために市販薬では効果が得られていないこともあります。基本的な目安として、市販薬を使って数日経過しても効果が得られない(もしくは悪化する)時は、医療機関を受診してもらいましょう。日数や回数の目安は、添付文書に記載されています。また、判断材料のために、商品知識と病態の知識を身につけておく必要もあります。

登録販売者研修のすべて!効果的な学び方とキャリア展望

登録販売者研修は、医薬品の販売を適正に行うために必要不可欠です。この記事では、研修の概要や法律、効果的な学び方、研修後のキャリア展望まで詳しく解説します。

マニュアルを確認する登録販売者

厚生労働省の指針に基づく研修制度が整備されており、薬剤師と登録販売者の研修の違いを理解することで、新人登録販売者に適した研修プログラムを見つけることができます。

この記事を読むことで、登録販売者研修を最大限活用して、資質向上を図ることができるでしょう。

 

登録販売者研修の概要と重要性

登録販売者研修は、医薬品販売業務に従事する者が適正な知識と技能を身につけるための制度です。

研修を受講することで、医療現場や薬局での安全な薬の取り扱いが可能となり、医薬品の適正使用や医療の質の向上に寄与できます。具体的な研修内容は、医薬品の分類や法律、薬事法、薬剤管理、そしてコロナ感染対策など幅広い知識が網羅されています。

そのため、登録販売者研修の重要性は非常に高く、薬を販売する際の信頼性や安全性を確保するために必要不可欠です。

年間研修時間の最低要件と法律

登録販売者研修には、法律によって定められた年間の最低研修時間が存在します。この最低要件は、医薬品販売業務を適切に行うために不可欠な知識と技能を維持・向上させる目的があります。

具体的には、薬剤師法や薬事法、厚生労働省の指針に基づいて定められており、適切な研修時間を確保しないと登録販売者の資格が失効する可能性があるため、注意が必要です。

また、研修内容の確認や受講状況の把握も重要であり、適切な研修を受けることが求められます。

厚生労働省の指針に基づく研修制度

登録販売者研修は、厚生労働省の指針に基づいて実施されています。

これは、全国の薬局や医療機関で働く登録販売者が共通の基準で研修を受けることができ、医薬品の適正な取り扱いを確保するためです。

指針では、研修内容や研修方法、研修時間について明確な基準が定められており、これに従って各都道府県で研修が実施されます。

また、厚生労働省は、適宜研修制度の改善や更新を行っており、登録販売者は最新の情報に基づく研修を受講することが可能です。

薬剤師と登録販売者の研修の違い

薬剤師と登録販売者の研修は、それぞれ役割や責任範囲に違いがあるため、研修の内容や目的も異なります。

薬剤師は、処方箋に基づく医薬品調剤業務を行う専門職であり、より専門的な知識と技能が求められます。一方で、登録販売者は、一般用医薬品の販売業務を担当し、適切なアドバイスや販売を行うことが求められます。

そのため、登録販売者研修は、薬剤師研修に比べて一般的な医薬品に関する知識や法令に重点を置いた内容となっています。

登録販売者研修を受けなかった場合は?

登録販売者研修を受講しなかった場合、法律に定められた義務違反となり、罰則や資格喪失のリスクがあります。

具体的には、薬局や医療機関での働きづらさや、一般消費者からの信頼の喪失が考えられます。

また、研修の不足により、薬の適切な取り扱いやアドバイスができなくなる可能性があり、患者さんの健康や生活に悪影響を及ぼすこともあります。

最悪の場合、薬事法違反や薬剤師法違反による罰金や業務停止命令が発令される危険性もあるため、登録販売者研修は必ず受講し、適正な知識と技能を身につけることが重要です。

登録販売者研修を最大限活用して資質向上を目指す

登録販売者研修を最大限活用することで、業務遂行能力や知識の向上が図られます。外部研修機関の活用やオンライン研修の利便性を生かし、資質向上に努めましょう。

今後の業務に役立つ研修プログラムを選び、効果的に学んで自分のスキルを磨きましょう。

研修を通じて得た知識や技術は適切な業務運営に活かせるため、積極的に受講してください。

薬を売ったら終わりではありません。

新人時代は、商品を売った後で「この選択でよかったのか?」と不安になることもしばしばです。

その後の経過、薬の効果を聞くチャンスは逃がさずに。

マニュアルを確認する

「また来てください」の声かけが成長につながる。

症状の聴き取りをして、お客様が納得して購入されたら、ㇹッと一息つきたくなりますが、薬を売ったらそれで終わりではありません。「その商品の選択は本当に正しかったのか?」「症状はちゃんと治まったのか?」・・・・・気になりませんか?

接客の最後に「何かあったら、また相談に来てください」「商品の使い方で困ったことがあったら、いつでも電話してください」という声かけをしましょう。

特に新人登録販売者は、なるべく早く接客を終わらせたい心理から、お客様と深く関わることを避けたくなり、なかなか「また来てください」と言えないかもしれません。また、店舗によっては、そもそも一人一人とじっくり関わることが不可能というケースもあるでしょう。

すべての登録販売者におすすめするわけではありませんが、「また来てください」と言う言葉は、症状や薬に対して不安を抱いているお客様にとって、安心できる声かけではないかと思います。

期待した効果を得るためにも、販売時に正しい使い方などの情報提供を行ないますが、それでも使用中に疑問や不安が生じることはあります。

声かけをすると実際にまた来店する人は多いと思います。「あの薬効いたよ!」「まだよくならないから、今度は別の薬にしょうかな?」などと、効果の報告や再度の相談を受けることもよくあります。こちらとしても声をかけた以上、また来店されることを想定して調べておかなければなりません。勉強しなければならない状況に自分を追い込む意味でも、有効です。

便秘で悩む女性

新人登録販売者からは、「接客が怖い」「接客が長引くと困る」という声をよく耳にします。「知らないことを聞かれたらどうしょう。」「間違ったことを伝えたしまったらどうしょう。」と不安が先に立つのは理解できます。それでも、売った薬が効いた、効かなかったという情報や、相談が多い事例などを記録しておくことは、スキルアップ医する上で大きな財産になります。

接客に自信が持てない新人の時こそ、積極的に「また来てください」と言いましょう。そして、お客様との信頼関係を少しずつ築いていきましょう。

💛安心感を与える接客の例

・「何かあったら、また相談に来てください」と声掛け

・「商品の使い方で困ったことがあったら、いつでも電話してください」と声掛け

・店内の他の資格者と情報共有

◎気になる接客事例や再来店の確立が高いケースは、その内容をスタッフ間で共有し、自分が店頭にいない時に来店されても対応できるようにする。

クレームを減らす一言アドバイス

クレームはできれば避けたいもの。販売時には「使用上の注意」をひとこと添えるだけでも、お客様からのクレームを減らす効果があります。

セルフ式店舗での情報提供の難しさ

ドラッグストアセルフ店舗

ベテランの登録販売者でも「クレーム対応が好き」という人はまずいないでしょうが、特に新人にとっては怖く、緊張を強いられるものだと思います。クレームの対応についてはマニュアルを設けている企業も多いので、勤め先のルールに従うの基本です。

ただし、気をつけたいのが「すすめられて飲んだ薬が効かなかった」というような相談。これは「クレーム」ではありません。症状が改善せず、何度か継続し来店されてお客様もいます。困って相談に来られるわけですから、真摯に対応しましょう。

接客業をしていると、理不尽な言い掛かりや、身勝手とも思える要望を受けることもしばしばあります。しかし、「使用上の注意を一言添えて販売していたら、このクレームは起きなかったかもしれない」と思える事例も多々あり、コミュニュケーションや商品知識によってクレームを防げる場合もあるように感じます。ここでは、「使用上の注意」に関係するクレームについていくつか事例をご紹介したいと思います。

下痢止めの薬

下痢を止めたいからと、塩酸ロペラミドを配合した止瀉薬を購入したお客様がいました。自宅で開封して添付文書を読むと、「相談すること」の欄に「急性の激しい下痢または腹痛・腹部膨満・吐気等の症状を伴う下痢のある人(本剤で無理に下痢を止めるとかえって病気を悪化させることがあります。)」との記載。しかし、「店頭ではそんな注意喚起をしてくれなかった。リスクのあるのなら、なぜ買う時に情報提供しなかったのか」と立腹でした。実際、そのお客様は吐気をともなう激しい下痢を起こしており、「もし、知らずに飲んでいたら悪化したかもしれないじゃないか!」と主張されていました。

このケースで難しかったのは、セルフ式の店舗であったことです。セルフ式の店では、お客様自身で棚から市販薬を選び、レジで会計します。そのお客様も店頭でスタッフに相談することなく購入していたので、情報提供のチャンスがなかったともいえます。

しかし、「リスクがある薬なら、レジで精算する時にでも症状を確認するべきではないか」との指摘を受けました。土瀉薬の場合、薬で下痢を止めることで病状が悪化するケースがあるのは確かですから、お客様の指摘も一理あります。とはいえ、登録販売者以外のスタッフがレジを担当していた場合は、そうした声かけも難しい面があります。

「何かおこまりですか?」の一声やレジでの一言アドバイス

他にもこんなケースがあります。「温感湿布を剥がしてすぐにお風呂に入っていたら、患部に火傷のような灼熱感があった。その後もしばらくヒリヒリした痛みが続いてつらかった」⇒温感湿布は入浴の1時間ほど前に剥がすようにお伝えしなければなりません。

「イボ取りクリームを首にあるイボに塗ったら、赤くただれてしまった」⇒「首などの皮膚のやわらかい部分には塗らないように」という使用上の注意を、販売時に伝えておけば回避できたでしょう。

こうしたクレームは、店頭で適剤を選び、正しい使い方を伝えることができれば減ると思います。とはいえ、相談せずに購入されてしまうと対処しにくいのも事実。ですから、レジでの一言アドバイスや簡単な質問で、少しでも販売に関わることが大事です。長時間、薬棚の前で商品を眺めている人や、商品選びに迷っているような人には、「何かお困りですか?」などと一声かけるようにするといいでしょう。

解熱剤

また、ごく稀なけーすですが、商品をおすすめした際に、「この薬が効かなかったら、あなたが責任を取ってね」と言われたことや、「飲んだ薬が効かなかったから返品したい」と言われたこともありました。このようなケースは安易に対応できませんので、店長の指示や店舗のマニュアルに従いましょう。販売する時に、効き目を保証するような言い方をしないことや、「副作用はありません」などと言わないのは当然ですが、断定的な言い方はトラブルの原因になりやすいので、対応時の言葉遣いにも注意しましょう。

また、これもごく稀にではりあますが、「購入した商品の味がおかしい」「成分が沈殿している(液剤など)」「いつもと色や味が違う」など、商品の品質に関する問い合わせやクレームが届くこともあります。商品の性質上、正常な範囲なのかどうかは店頭では判断が難しいため、メーカーに報告をして対応してもらうことが多くなります。こちらも店長の指示やマニュアルに従って対応しましょう。

持病のある人にはどう対応する?

医療用医薬品を服用している人からの相談は、ケースごとに対応が異なるので、接客を重ねて知識を増やしていくことが必要です。

会社のマニュアルを確認し、受診勧奨ならきちんと説明する

マニュアルを確認する

持病のある人の対応も、新人登録販売者が苦手とするところです。持病といってもいろいろですが、高血圧や糖尿病などの医薬用医薬品を服用している人が、風邪薬を求めてドラッグストアにやって来ることはよくあります。基本的に、医師の治療を受けている人が体調を崩した時は、かかりつけ医を受診するのがよいのですが、「市販薬も病院の薬も同じ薬」と考えて、ドラッグストアに相談に来る人も多いのです。

企業の中には、対応のマニュアルを用意しているケースもあります。「持病のある人へは販売しない」というルールの会社もあるので、勤め先の規定を確認しておきましょう。特にルールがない会社では、登録販売者がその都度判断して対応することになります。

持病がある場合は必ず受診勧奨しなければいけいない、というわけではありません。たとえば、降圧薬を服用している人が風邪薬を買い求めた場合などは、いくつか質問した上で、その人の状態によっては市販薬で対応できることもあります。一つの例としてあげると、次の4つの質問をし、大丈夫だと判断できた場合は販売する。

  • 処方されている薬の名称
  • 普段の血圧の数値
  • 普段から風邪をひいた時には市販薬をよく服用しているのか?
  • 市販の風邪薬で体調が悪くなったことがあるか?

しかし、こうした対応をするには、まず持病の病態(この場合は血圧)についてよく知り、病院ではどのような治療や投薬が行われているのかなどを学習する必要があります(登録販売者による医療用医薬品との相互作用についての情報提供は、法的に難しいので行いません。自身が判断するために知識として持っておくということです)。その上で、登録販売者自身の責任において販売を判断するので、新人にとっては非常にハードルが高いです。商品の「添付文書」を読むと、持病のある人でも服用可能かどうかがある程度確認できるので、そうした商品をリストアップしておき、自身を持って判断できない場合は受診勧奨としましょう。薬剤師が常駐している店舗なら、持病のある人への対応を代わってもらうのがベストです。

また、薬と薬の相互作用の他にも、風邪などで体調を崩すことで持病が悪化するケースもあります。

糖尿病の発症リスク

たとえば、糖尿病の治療薬を服用中の人が風邪をひいて食事が摂れないと、血糖値が下がりすぎて低血糖に陥ることがあり、非常に危険です。こうしたリスクを患者さん本人が知らないことも多いため、店頭での注意喚起や情報提供は重要です。過去に市販薬の服用で持病が悪化したことがある人、処方されている薬が数種類ある人、合併症を超えている人などはリスクが高いですから、受診勧奨してください。

その際は、「自信がなくて売れないので医療機関を受診してください」ではなく、お客様が納得できる説明をしましょう。

商品の使い方や養生方法も説明しよう。

間違った医薬品の使い方、効果が得にくい使い方をしている人、不養生が治癒を妨げている人へ、正しい知識を伝えるのも登録販売者の仕事です。

薬の正しい飲み方、使い方を知らない人は多い

医薬品の正しい使い方や服用の仕方を消費者が知らないことがあります。市販薬でも医療用医薬品でも、自分が飲んでいる薬を安易に他人に譲ったり、大人用の薬を子どもに飲ませたりといった、危険な行為を見聞きしたことがある人も多いでしょう。日本では、薬に関する教育がほとんどされておらず、医薬品とサプリメントの違いを知らない消費者も少なくありません。

さまざまなお薬

お客様が購入する薬を決定したら、その使い方(飲み方)や保管方法、家庭でのケア(養生法)も伝えましょう。

内服薬の場合は、用法・用量が商品に記載されているので比較的わかりやすいと思いますが、皮膚疾患用の塗り薬や湿布薬などの外用薬は、家庭での使用法に戸惑うこともあります。いつ塗るのか、1日に何回塗るのか、どれくらいの範囲に塗り広げるのかなど、「塗り方」を間違えると商品の効果を十分に発揮できません。

また、保管の仕方も品質に影響を与えることがあります。商品に記載されている使用期限は未開封の状態でのものなので、開封後の保管法や使用期限なども情報提供したいところです。

大人用の薬は子どもの手の届かないところに保管することも基本ですが、子どもの誤飲事故の上位に「医薬品」があること考えると、意外に徹底されていないのかもしれません。お菓子のグミのような色鮮やかなソフトカプセルや、ラムネ味のチュアブル錠など、子どもがつい口に入れたくなるような市販薬もあるので、保管には十分気をつけるよう販売時に行こと添えることが大事です。

赤ちゃんに薬を飲ませる

それから、昔と今で常識とされる対処法が異なるケースについても、店頭での説明が有効です。たとえば、かつて傷口は消毒するものでしたが、湿潤療法(モイストヒーリング)では治癒を遅らせる原因になるため消毒薬を使用しないのが今の常識です。近ごろは、火傷や傷の湿潤療法商品が多く市販されており、一般消費者に認知されつつありますが、高齢の人にはなじみのない新しいケア方法かもしれません。湿潤療法が適さないケースもありますし、湿潤療法の正しい行い方はまだまだ消費者に浸透していないため、新人登録販売者にとっても対応が難しい事例になります。

皮膚疾患や外傷では、ガーゼを貼った方がいいのか、入浴時に患部を石鹸で洗ってもいいのか・・・・・など細かいアドバイスがあるかどうかで、ケアの効果も変わってきます。接客中にケアの仕方について聞かれることも多いので、代表的な皮膚疾患の症状とともに、家庭でのケア方法学習しておきましょう。

ちなみに、すり傷や切り傷などの外傷は、薬とともにガーゼや絆創膏、サージカルテープなどを一緒に購入されるケースが多いです。こうした商品も種類が非常に多く、それぞれの特徴の違い(通気性がある、水を通さない、かぶれにくい素材など)を把握しておく必要があります。

根本的な養生法を伝えることも大事

「一発で風邪が治る薬をくれ!」などと言われて、店頭で困った経験のある登録販売者は多いと思います。薬で病気が治ると考えている人は多いですが、食事や生活習慣の乱れ、ストレスや疲労など、病気の原因は普段の生活の中にあり、治癒には生活の見直しが不可欠です。忙しくて仕事を休めないなど、人それぞれの事情はあると思いますが、薬は魔法ではありません。

また、喫煙や飲酒は薬の効果を得にくくするため、風邪をひいている間はたばこやお酒をやめる(減らす)ようアドバイスすることも大事です。ただし、こういったアドバイスは、しばしばお客様に嫌がられます。ですから命令口調ではなく、「お願いします。風邪が治るまでの間、少しだけたばこをひかえてみていただけませんか?」などと依頼する形で話すと、比較的素直に応じてもらえます。くどくどと説得するのではなく、短くサラッとお話しするのがコツです。

養生なくして健康なし、薬は単なるサポート役に過ぎません。体力のある若い人は多少無理をしても治りが早いかもしれませんが、病後・産後の人や小児・高齢者などは治りが遅い傾向がありますから、飲む人の年齢や状況に応じた養生法をアドバイスしましょう。

種類が多い薬はどう選べばいいか。その2

用途から商品を絞り込む場合

くすりの種類

★使う人の年齢★

  • お客様本人だけ使う ⇒ ご本人の症状に合った商品
  • 子どもなど家族も一緒に使う ⇒ 子供も服用できるか成分、小粒で飲みやすい、フルーツ味など

★服用のタイミング★

  • 今すぐ ⇒ 即効性を期待するならシロップ剤や液剤、顆粒など
  • 常備薬として購入 ⇒ 顆粒なら分包タイプ、錠剤ならPTPシート

★常備薬の場合★

  • 家庭用 ⇒ 子供がいる場合はファミリー向けの商品
  • 職場用 ⇒ 分包タイプ。不特定多数の人が服用するため、アレルギーなどのリスクが少ない成分(アセトアミノフェンなど)

★携帯・保管の方法★

  • 外出先に持ち歩いて服用 ⇒ 分包タイプ
  • 家で服用 ⇒ 瓶入りタイプ(開封する時長く持たないため、使いきれる錠数の商品)

予算から商品を絞り込む場合

錠剤やカプセルのくすり

お薬を購入する際は、「価格」も重要なポイントになります。実際に「1000円以内で収めたい」などど、お客様が予算をあらかじめ伝えてくださるケースもあります。

特に栄養ドリンク剤は100円未満の商品から、3000円を超える商品まで価格の幅が広いため、1000円前後、2000円前後など、大まかでも結構ですから、「ご希望の価格帯はございますか?」と最初に確認してみても良いでしょう。

店舗のドリンクストッカーでは、「最も安い価格帯が最下段、高価格帯が上段(又はお客様目線の位置)などと値段別に陳列されることが多いので、その点でも予算別の絞り込みがしやすいかもしれません。

また、お客様が低価格帯の商品をご希望の場合でも、成分の配合量など商品の違いをしっかり説明できると、少し高い価格帯の商品を提案して購入につながるケースもあるので参考にしましょう。

種類が多い薬はどう選べばいいか。

風邪薬や胃腸薬など、多種多様な商品が出ているカテゴリーでは、年齢・用途・価格など効能以外の視点を加えると絞りやすくなる。

来店されたお客さんに「その商品をおすすめした理由」を説明できるようにしておく。

お薬を説明する

風邪薬や解熱鎮痛剤、胃腸薬や皮膚病薬などは、種類が多く、購入時に「どれがいいのか?」と相談されることの多いカテゴリーです。テレビCMなどで頻繁に宣伝されている薬を「〇〇〇〇はありますか?」と指名買いする人も少なくありません。

お客様が相談してくるのは、症状がつらくて困っている時や、自分の症状に合った商品がわからないときです。自分が経験したことのある症状だと対応しやすいので、風邪の症状などの相談では新人登録販売者も聴き取りに苦労することは少ないと思います。あらかじめ相談の多い症状に適した商品を分類して、接客フローに従って症状の聴き取りから商品選択へ進めば、スムーズに対応できるでしょう。

しかし、商品が多すぎる場合、やはりお客様は迷います。そのため、登録販売者はある程度限定して商品を提案することが大事な事なのですが、同時に「これだけたくさんの中から、どうしてこの薬を選んですすめたのか?」納得できるように説明することも必要です。

「この商品とこの商品は、何が違うのか?」と聞かれることもよくあります。お客様の多くが一番気にするのは効き目の差です。その差をわかりやすく説明できるように、特徴を簡潔に説明する文章を商品ごとに考えておき、質問されたらすぐに答えられるように準備しておくのが良いでしょう。

全部を一度に覚えるのは大変なので、店舗で売り上げの高い人気の商品から始めましょう。たとえば、風邪薬はとても種類が多いですが、対応する回数も多いカテゴリーなので、マスターするのにそれほど時間はかからないはずです。

商品選択に困ったら効能以外の希望を質問してみる

お客様に提案する商品を選ぶ時は、緩和したい症状の他に、使う人の年齢や用途も確認すると、自然に商品が絞られてきます。子どもも含めた家族で使用する薬なのか、今すぐ必要なのか、常備薬として買うのか。とにかく早く効くもの、眠くならないも、長時間効くものといったニーズ、味(子ども向けの薬など)や使用感(目薬など)、剤型(顆粒より錠剤がいいなど)の希望もあります。

また、価格もお客様にとっては大事な要素です。例えば、価格の幅が広い栄養ドリンク剤や目薬などは「ご希望の価格帯はございますか?」と最初に「予算」をお聞きしてみましょう。

それでも商品を絞り込めない時は「いつもよく飲まれている商品はございますか?」などと聞いてみるのも良い方法です。特に風邪薬や解熱鎮痛薬では、お気に入りの商品がある人が結構います。市販薬の主な役割は対症療法ですから、症状を抑える効果があるかどうかが最大の選択ポイントです。薬を飲んでも症状に変化がなければ「効いた」という実感は得られません。逆に、過去に「効いた」経験がある商品には、大きな信頼を抱くものだからです。

一口に風邪といっても症状は毎回同じではなく、前回使った商品がまた効く保証はないのですが「特にこの商品が適している」というものがない場合は、本人が信頼する商品を選んでいただくのもいいでしょう。

胃薬

胃腸薬も、症状別に様々な商品があるカテゴリーです。例えば「空腹時の胃痛」や「食後の胃もたれ」など明確な症状なら商品も選びやすいのですが「何となく食欲が出ない・・・・・」など、漠然とした症状の場合や、逆に症状が多すぎる場合は困ってしまいます。そんな時は、複数の症状に対応できる総合胃腸薬をすすめることができるので、「判断に迷った時はこの商品」というように、自分なりの最終アイテムを決めておくのも、新人のうちは有効です。

 

プライベート商品はどうすすめたらいいか?

PB(プライベート)商品や推売品への考え方は会社ごとに違いますが、「売る」ために症状や商品についての知識が必要であることは変わりません。

 

プライベート商品

PB商品の押し売りは時代遅れ?

PB(プライベートブランド)商品などの推売品を優先的に売ることが求められる企業で働く登録販売者も多いでしょう。推売品の売り方は企業によってスタンスが違いますが、推売品をたくさん売る人が高く評価される、という会社は確かにあります。

最近は、厳しいノルマを課す会社は減っているようですが、「レジでPB商品にスイッチする(同様の効果のあるPB商品をすすめる)ように」と指導される場合もあります。このタイプのドラッグストアに勤務された登録販売者も多いと思いますが、お客様から「なぜ、この店の店員はみんな同じ商品ばかりすすめるの?」とよく聞きます。一方でPB商品があっても推売するルールやノルマを設けていない企業もあります。

スーパーやホームセンター、ディスカウントストアなどは、医薬品のPB商品がない企業の方が多いかもしれません。推売品やPB商品がないと自分の判断で薬を提案できるため、登録販売者にとっては働きやすい環境といえます。

ホームセンター

その反面、企業が「積極的に医薬品で利益を上げようとする方針ではない」ともいえます。そうした店舗では、医薬品売り場以外での作業が多くなる傾向があり、薬の接客場面が少ない可能性もあります。過剰なノルマがあると、お客様の症状にかかわらず売ることに必死になってしまう傾向がありますが、押し売りになっては本末転倒。

会社の利益に貢献することも必要ですが、市販薬の専門家である登録販売者としては、お客様の健康や安全を守ることが大事です。いずれにしても、「何が何でも推売品を売りなさい」という手法は、もう時代遅れであることは言うまでもありません。

PB商品は接客スキルを磨ける商品でもある

購入を決めるのはあくまでもお客様です。PB商品も他の商品と同じように効果や特徴を説明して、お客様自身に選んでいただくのが登録販売者のスタンスでしょう。推売品のみを提示するのと、他の商品も一緒に紹介して選んでもらうのとでは、買う側の印象がだいぶ違います。

また、メジャーな商品と比べて認知度が低いPB商品や推売品は、商品の良さをうまく説明できないとなかなか購入につながりません。 自社商品の知識はもちろん、それがメジャーな商品とどこが同じで、どこが違うのかも把握し、アピールすることが必要です。そういう意味では、PB商品は接客スキルを磨ける商品ともいえます

やる気のある登録販売者

おすすめしたい商品を、お客様に受け入れてもらえないことも時々あります。お気に入りの商品やブランドがある人もいますし、友人や家族からの口コミやメディアの評判などを信頼している人もいます。そもそも店員にあれこれ説明されることを好まず、「自分で決めたい」と考える人もいます。

購入しようとする商品が、本人の症状や体質に明らかに合っていなければ、きちんと情報提供をして、正しい商品選択を手伝う必要がありますが、そうでない場合は介入せずに見守ってもよいでしょう。

こちらの「売りたい」という気持ちが見えすぎると、商品は売れないものです。「売らなければ!」と気負わずに、あくまでも選択肢の1つとして推売品を紹介した方が購入の確立が上がる場合もあります。

利益が出なければ商売は成り立ちませんし、その利益が自分たちのお給料となることを考えれば、推売品をすすめることは悪いことではありません。また、推売品にはナショナルブランドの商品とほぼ同じ成分なのに価格が安いなど、消費者に有益な商品も多いです。推売品がそのお客様の症状や要望に合っていれば、自信を持ってすすめましょう。