登録販売者のスキルアップに必要なフォロー体制

登録販売者のスキルアップに必要なフォロー体制づくり

薬種商の実務経験とは

登録販売者として働いていく上で、資格の歴史のようなものも知っておく必要があると思います。2009年にスタートした登録販売者制度は、「新しい資格」と認識されて人も多いですが、実はだいぶ前(なんと明治時代)からその前身資格が存在していました。

「薬種商販売業(薬種商))」というものです。旧薬事法によって定められた資格で、改正薬事法で登録販売者資格が新設されるとともに、薬種商は登録販売者へと移行されました。

薬種商の試験は登録販売者よりも難易度が高く、薬事関係法規、日本薬局方、生薬、化学、薬理学、解剖整理学、公衆衛生などの筆記試験と、実物の医薬品を用いた実物鑑定試験がありました。

また、受験前に3年以上の実経験が必要でしたから、合格時にはプロとして必要な知識とスキルが身につく仕組みがあったと思います。

お薬の説明をする登録販売者

登録販売者制度の実務経験

しかし、登録販売者試験では、実物鑑定試験が廃止され、薬理学や化学などの専門的な問題も大幅に省略され、難易度が下がりました。また、受験資格の実務経験についても緩和され、2015年の試験からはドラッグストア等での販売経験が一切なくても、誰でも受験できるようになっています。

前述のとおり、実務経験がない場合は、合格後に24か月の業務経験を積まなければ正式に登録販売者にはなれず、その間は「研修中」という扱い、つまり、実務の経験は受験前でも合格後でもよくなったということです。

この登録販売者制度ができる際にも「実務経験」は大きな議論となっていました。厚生労働省も当初から「医薬品を扱う資格に実務経験は必須である」という方針のもと、2007年に開催された「登録販売者試験実施ガイドライン作成検討会」において、「受験資格から実務経験を撤廃することは困難」と述べていました。結果的に、薬種商販売業では3年以上必要だった実務経験が1年に短縮される形で残りましたが、それにより資格者の質が低下することは当初から危惧されていました。

2015年以降は、試験合格後に業務経験を積む「研修中の登録販売者」の数が一気に増え、それに比例して店頭での「実務の壁」に直面する新人さんも増えました。また、新人の数が増えれば、その人たちを指導する人も必要になります。「自分もまだ実務に自信がないのに、研修中の後輩を指導しなければならない」という登録販売者の声も少なからず耳にするようになりました。

登録販売者の資格は、単に「薬を売れる免許」ではなく、「市販薬の専門家」です。実務経験によるスキルアップが非常に重要で、机上の勉強だけで仕事をこなすのは困難です。

特に、医薬品は人の健康に関わるものですから、それだけ責任も重くなります。できれば、「研修中」の期間に、職場での研修や勉強会で商品や病態の知識を身につけたいところですが、実際にはそうしたサポートがないまま仕事に従事しているケースが大半、人件費を抑えるために、必要最低限の実務経験を満たしただけで、1人で売り場を任されてしまうなど、ベテランの仕事ぶりを間近で見て手本にできる機会が少ないことも、新人さんのつまずきの一因となっているようです。

登録販売者実務経験の必要性と重要性

登録販売者制度のスタート後は、試験に合格すればそれでいいという雰囲気が少なからず蔓延していて、登録販売者自身も雇う側の企業も、合格後のスキルアップに非常に消極的でした。しかし、資格誕生から10年以上が経過し、資格者は「量から質」の時代に突入しています。

試験に合格しただけでは通用しないことを、多くの登録販売者が身をもって実感し、変化が起こりつつあります。新人教育に熱心な企業もでてきていますが、多くの場合、合格後のスキルアップは登録販売者個人の努力に任されています。「もっと接客をしたい」「実務経験をちゃんと積みたい」と望む資格者に応えられる、企業側の環境作りが今後の課題といえるでしょう

合格後のスキルアップができる職場かどうかは、企業としても良い人材を確保するための重要なポイントになってくるのではないでしょうか。

登録販売者は店舗の客層を把握する!

店舗の客層を把握する!

客層によって売れ筋商品、忙しい時間帯、求められる接客のタイプなど変わっていきます。自分の勤める店の特徴をつかみましょう。

客層が変われば、仕事の勘所がわかる

取り扱い商品をある程度把握出来たら、次は店舗の客層を観察してみましょう。住宅街、オフィス街、駅前、ショッピングモール内のテナント、スーパーやホームセンター内の薬コーナー、立地や規模などによって、客層はそれぞれ異なります。

新型コロナウィルスの感染拡大以前は、お客様が爆買いをする外国人ばかりという店舗もあったでしょう。また、同じ店でも午前中と夕方や夜など、時間帯で客層が変わる場合をあります。

かぜ薬

繁華街の薬局・薬店なら男性客の割合が多かったり、栄養ドリンクや精力剤、二日酔い関連の薬などがよく売れたりします。住宅街にある店舗やスーパー内の薬コーナーでは主婦や高齢者のお客様が多くなり、売れる医薬品の幅も広がります。また、店舗の近くに総合病院やクリニックなどがあると、病院で処方された薬(医療用医薬品)に関する質問をお客様から受けたり、持病のある人の来店が増えたりもします。

オフィス街や駅ナカの店舗等は急いでいるお客様が多く、じっくり相談するよりも早く買い物をすませたいという雰囲気。逆に、住宅街の店舗やスーパー内の売り場では、病気に関する質問の他に、子育てや介護に関する悩み、日常生活の中で起こる体の不具合など相談内容が多岐にわたり、お客様1人あたりの対応時間が長くなる傾向があります。

素早く対応したり、じっくり向き合ったりと、接客のスタイルも変わります。

ドラッグストアなどは薬を買う目的で来店するお客様が中心ですが、スーパーやホームセンターでは買い物の「ついでに」薬も買うという人が多く、売れる商品の傾向も異なります。

ホームセンターにある薬売り場

自店で人気のある商品を把握しておくと、発注や陳列の業務で役立ちます。また、商品知識を身につける優先順位の目安にもなります。「売れる商品」は、レジ業務や納品・発注作業に携わる際に意識することで自然と見えてくるものです。

自店の売れ筋商品を把握する方法 

①納品発注作業で・・・

・納品量が多い、発注の頻度が高い商品は、それだけ売れている(その地域で人気がある)証拠

・会社から大量に納品される商品は、販売に力を入れなければならない商品(商品名)であるケースがほとんど

・テレビ等のメディアで紹介された商品が爆発的に売れると、発注しても入荷しなくなることもある

②品出し、陳列作業で・・・

・棚の上段(お客様の目の高さ)にある商品や売り場面積を広くとっている商品は、売れ筋商品や会社が販売に力を入れている商品(優先的に学習すべき商品)

・中には、棚の下段にあっても回転の速い商品もある

・品出しや陳列作業をしていると、商品の配置や商品名を覚えられ、お客様からの問い合わせに素早く対応できるようになる