登録販売者としてトリアージと受診勧奨はどうするか?

登録販売者が、接客において避けては通れないトリアージと受診勧奨。自身を持って判断するためには、病態や治療に関する知識が欠かせません。

「いつもと違う感じ」が有効な判断材料料に

災害・事故や救急医療などの現場で、重症度によって治療の順番を決めることを意味する「トリアージ」という言葉を聞いたことがあるかと思います。登録販売者の仕事でも、来店客が訴える症状が、市販薬で対応可能かどうかを判断するトリアージを行います。

まれですが、市販薬で対応できないような重い症状の人が来店することは実際にあります。原因不明の頭痛や腹痛、しびれ、高熱、下痢、嘔吐などは判断が難しく、時には命に関わることもあるため、店頭では慎重な対応が求められます。

薬の説明をする登録販売者

重篤な状態かどうかを判断するための例として「いつもと違う感じはありませんか?」という質問です。いつもの風邪と症状が違う。いつもより治りが遅く薬が効かないなど、重篤な事例では本人が直観的に違和感を覚えることが多いからです。

トリアージの結果、市販薬で対応できるケースなら比較的スムーズですが、難しいのは市販薬では対応できない症状や、医師の治療が必要な事例です。

その場合、受診勧奨をしますが、素直に応じてもらえないケースが少なくありません。急性の異変は本人もつらいため応じてもらいやすいですが、日常生活に大きな支障が出ていない症状では、市販薬による対応を希望される場合が多いのです。「病院へ行けないからここへ来たんじゃないか!」と怒る人もいて、納得してもらえないこともあります。

そんな時は、なぜ市販薬では対応できないのか、市販薬を使用し続けることによるリスク、病院を受診するとどんな治療や投薬がなされて、どんな効果が得られるのか、(あくまでも一般論として)などを説明して、受診のメリットを伝えます。明確な理由がないと、「受診する」という行動につながりにくいのです。

「自分ならどんな説明をされたら納得するか?」と、相手の立場になって考えてみましょう。医療用医薬品については登録販売者の試験勉強でも学びませんし、店頭で情報提供することもできません。しかし、病院で行われる治療法や治療薬についてもある程度知識がないと、受診勧奨する「ライン」がわからないのも事実です。店頭での相談が多い事例については、知っておいた方が良いでしょう。

正しい接客の手順とコミュニケーション能力

接客が不安という人は、必要な段階をふんでいない可能性があります。症状の把握から商品選び、使用のアドバイスまでの流れを確認しましょう。

店頭での接客フローを組み立てよう

登録販売者は、医師のように病気の診断はできませんが、皮膚炎や火傷の傷を店頭で見せられて「これに効く薬をください」などとお客様に言われることはよくあります。登録販売者としては、その権限を越えない範囲で、症状に適した商品を選び、情報提供を行なわなければなりません。

薬の確認をする登録販売者

新人時代は、接客のたびに緊張することでしょう。そんな時、接客フローが身についていると、お客様の話を聴くことに意識を集中できます。接客フローとは、「症状の聴き取り」から「商品の選択・提案」までの流れです。

医薬品を求めて来店する人は、何らかの症状を緩和・解消するのが目的ですから、まず具体的な症状を聴くことから接客が始まります。次に、聴き取った症状から病態を判断し、剤型や作用についての要望(錠剤がいい、眠くなりにくいものがいいなど)やアレルギーの有無などをふまえて、適した商品を選択・提案し、お客様に判断してもらいます。さらに、その薬の使い方や養生法のアドバイスも行います。

この過程で最も重要なのが「症状の聴き取り」ですが、病態の判断に必要な情報を不足なく伝えてくれるお客様ばかりではありません。そのため、登録販売者から適切な質問をしていく必要があります。新人の頃は「何をどのように質問すればよいのか?」と、頭を悩ませることでしょう。先輩の登録販売者の対応を見て学んだり、自身の接客経験を積み重ねることでしか、スキルアップできない部分もあります。商品や病態に関する知識量も大きく影響するので、コツコツ勉強し続けることも必要です。

さまざま薬の種類

また、短いやり取りの中で、適切な答えを導き出すためには、コミュニケーション能力も必須です。挨拶や言葉遣い、笑顔など、接客業として求められる基本的なスキルも身につけましょう。