間違った医薬品の使い方、効果が得にくい使い方をしている人、不養生が治癒を妨げている人へ、正しい知識を伝えるのも登録販売者の仕事です。
薬の正しい飲み方、使い方を知らない人は多い
医薬品の正しい使い方や服用の仕方を消費者が知らないことがあります。市販薬でも医療用医薬品でも、自分が飲んでいる薬を安易に他人に譲ったり、大人用の薬を子どもに飲ませたりといった、危険な行為を見聞きしたことがある人も多いでしょう。日本では、薬に関する教育がほとんどされておらず、医薬品とサプリメントの違いを知らない消費者も少なくありません。
お客様が購入する薬を決定したら、その使い方(飲み方)や保管方法、家庭でのケア(養生法)も伝えましょう。
内服薬の場合は、用法・用量が商品に記載されているので比較的わかりやすいと思いますが、皮膚疾患用の塗り薬や湿布薬などの外用薬は、家庭での使用法に戸惑うこともあります。いつ塗るのか、1日に何回塗るのか、どれくらいの範囲に塗り広げるのかなど、「塗り方」を間違えると商品の効果を十分に発揮できません。
また、保管の仕方も品質に影響を与えることがあります。商品に記載されている使用期限は未開封の状態でのものなので、開封後の保管法や使用期限なども情報提供したいところです。
大人用の薬は子どもの手の届かないところに保管することも基本ですが、子どもの誤飲事故の上位に「医薬品」があること考えると、意外に徹底されていないのかもしれません。お菓子のグミのような色鮮やかなソフトカプセルや、ラムネ味のチュアブル錠など、子どもがつい口に入れたくなるような市販薬もあるので、保管には十分気をつけるよう販売時に行こと添えることが大事です。
それから、昔と今で常識とされる対処法が異なるケースについても、店頭での説明が有効です。たとえば、かつて傷口は消毒するものでしたが、湿潤療法(モイストヒーリング)では治癒を遅らせる原因になるため消毒薬を使用しないのが今の常識です。近ごろは、火傷や傷の湿潤療法商品が多く市販されており、一般消費者に認知されつつありますが、高齢の人にはなじみのない新しいケア方法かもしれません。湿潤療法が適さないケースもありますし、湿潤療法の正しい行い方はまだまだ消費者に浸透していないため、新人登録販売者にとっても対応が難しい事例になります。
皮膚疾患や外傷では、ガーゼを貼った方がいいのか、入浴時に患部を石鹸で洗ってもいいのか・・・・・など細かいアドバイスがあるかどうかで、ケアの効果も変わってきます。接客中にケアの仕方について聞かれることも多いので、代表的な皮膚疾患の症状とともに、家庭でのケア方法学習しておきましょう。
ちなみに、すり傷や切り傷などの外傷は、薬とともにガーゼや絆創膏、サージカルテープなどを一緒に購入されるケースが多いです。こうした商品も種類が非常に多く、それぞれの特徴の違い(通気性がある、水を通さない、かぶれにくい素材など)を把握しておく必要があります。
根本的な養生法を伝えることも大事
「一発で風邪が治る薬をくれ!」などと言われて、店頭で困った経験のある登録販売者は多いと思います。薬で病気が治ると考えている人は多いですが、食事や生活習慣の乱れ、ストレスや疲労など、病気の原因は普段の生活の中にあり、治癒には生活の見直しが不可欠です。忙しくて仕事を休めないなど、人それぞれの事情はあると思いますが、薬は魔法ではありません。
また、喫煙や飲酒は薬の効果を得にくくするため、風邪をひいている間はたばこやお酒をやめる(減らす)ようアドバイスすることも大事です。ただし、こういったアドバイスは、しばしばお客様に嫌がられます。ですから命令口調ではなく、「お願いします。風邪が治るまでの間、少しだけたばこをひかえてみていただけませんか?」などと依頼する形で話すと、比較的素直に応じてもらえます。くどくどと説得するのではなく、短くサラッとお話しするのがコツです。
養生なくして健康なし、薬は単なるサポート役に過ぎません。体力のある若い人は多少無理をしても治りが早いかもしれませんが、病後・産後の人や小児・高齢者などは治りが遅い傾向がありますから、飲む人の年齢や状況に応じた養生法をアドバイスしましょう。